科学新聞は昭和21年に創刊された(当初は科学文化新聞)科学情報の専門誌です。現在も発行されている新聞ですが、昭和21年から25年までの記事をオンラインで利用することが可能となっています。簡単な会員登録を済ませれば、無料で記事(テキストデータおよびPDFファイル)を閲覧することができます。
昭和21-25(1946-1950)年といえば、第二次大戦直後の時期にあたります。創刊号を読んでみると、戦後日本の行く末と科学技術の役割に関する記述があります。以下抜粋。
科学の発展が人類の進歩を保証するかどうかは確かでない。この進歩は人間の物質的条件よりも精神的倫理的向上に係わるものが多いであろう。にも拘わらず科学の応用は或る面において我々の日常生活を和らげ美しくした。人間の心掛けさえよければ、この恩恵的な仕事は今後も続けられるであろう。生活の規範としてのデモクラシーは、統一に進む科学的思索に対する倦むことのない努力と倫理的な人間の態度であり実践だと信じられる。
中略
科学によってもたらされた技術、それによって変遷しつつある現代文化を我々は敗亡の祖国再建のために向上させなければならない。それこそがデモクラシー日本の内容付けだと信じている。かくしてポツダム宣言受諾の日本が世界人類の平和的生活に貢献できるであろう。
科学文化新聞は広く科学文化人の協力によって現代の科学文化について、個々の具体的事象を実証的に取り扱って、科学精神の普及につとめ、技術の向上と生活の合理化を促進し、日本デモクラシーの健全な発展を期するであろう。
昭和21年 04月29日(月)1面
「デモクラシー」や「ポツダム宣言」など、戦後の日本が民主化に動こうとしている情勢が伺えます。こういった状況の中で科学技術が果たしてきた役割、戦後の復興と科学技術の関係を振り返るには恰好の史料ではないでしょうか。
ちなみに、科学新聞データベース上で「放射性炭素」と検索してみると、以下の記事が見つかりました。
"人体に放射性炭素""宇宙線の衝突で変化し存在 人類発生も解明されん"
昭和23年 01月30日(金)1面
現在ではトレーサーや年代測定法など広く利用されている放射性炭素ですが、記事が書かれた昭和23(1948)年は放射性炭素による年代測定法が確立される時期にあたります。この功績で後にノーベル科学賞を受賞するWillard Frank Libbyらが、AAASの席上で放射性炭素の生成メカニズムや人類史研究への応用について発表したという記事。当時の興奮を窺い知ることのできる貴重な史料です。是非一度お試しあれ。
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